aruto's diary

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ダンガンロンパをプレイして、リアルな絶望と狂気に触れよう!

 (※ネタバレは体験版の範囲に収めているため、未プレイの方でも安心してお読みいただけます)
 残念ながら広告やパッケージの裏を見ても、「このゲームは何が面白いのか」を理解することは困難です。
「裁判ゲームの亜種で、アクション要素が加わったもの」のように宣伝されていますが、それはこのゲームの本質ではありません。
 詰め込まれた狂気の世界。それでいてポップであり、見た目が華やかでコミカル。これらが並立していることは、他のゲームにない魅力です。

  • モノクマ

 このゲームの看板といっても差し支えないキャラです。白と黒で区切られた外見は、それだけでも相当なインパクトがあります。しかもこれで学園長です。
 そしてコレ抜きでモノクマを語るわけにはいかない、CVの大山のぶ代さん。あの声でとてもキツくブラックなセリフをどんどん吐きます。
 人殺しをもためらわないその毒のある性格と、特徴的な外見や「オマエラ」「お仕置きしちゃうぞ」というユニークなしゃべり方が不思議なバランスを保っている、とても魅力的なキャラです。

  • ペルソナとは関係ない

 レビュー等で、アトラスのペルソナシリーズとの類似性を持ち出す人が結構いるのですが、実際のところ、あまり似ていません。
 ペルソナシリーズの特徴は、いわゆるロー・ファンタジー風の世界観で、登場人物が魔法のような特殊能力を使ったり、人間ではない生物を召還し、使役します。
 対するダンカンロンパの登場人物は「超高校生級」と名されこそするものの、頭を銃で撃ち抜かれたら人は死にますし、午前0:00の次はちゃんと午前0:01です。
 ダンガンロンパでキャラクタの出身地に「○○県」と実在の地名が挙げられている点を見れば、根底にある明確なコンセプトの違いが、よくわかります(ペルソナの場合は、あくまで現実のパロディとしてしか登場しません)。
 ペルソナシリーズは非現実をテーマにしたものですが、ダンガンロンパは現実の延長なのです。ここが、この二つのゲームの大きな違いです。
 強いて共通点を挙げるとすると、登場人物が学生という点と、スタイリッシュな画面デザインくらいでしょうか。たしかに彷彿とさせる部分はあります。

  • 現実に根ざした狂気

 ダンガンロンパは、あくまで現実に根付いた生々しさが大切なのです。
 登場人物は、この狂った学校から一刻も早く逃げ出したいと考えます。そのためには、「誰かを殺したクロだけが卒業できる」というルールの通り、人殺しをしなければなりません。
 しかし、彼らは超高校生級といえど、等身大の人間。しかも多感な学生です。我々と同様、殺人を侵すことに強い抵抗があります。当然ながら、悩みます。
 そして「人殺しなんてしたくない。モノクマはあんなことを言ってるけど、自分は絶対にやらない」と決意します。それにも関わらず殺人は起きてしまうのです。
 閉鎖空間に閉じこめられた15人のキャラクタたち。殺人者はその中の誰かという事実に、みな愕然とします。先ほどまで会話していた仲間が、自分を殺すかもしれない。こんなのはフィクションの中だけの出来事だと思っていたのに、そうじゃなかった。自分たちの目の前に、現実として立ちはだかる。
 そうしたキャラクタの葛藤も、このゲームにおける影のテーマです。キャラクタの心情が丁寧に描かれていることにより、「超高校生級」の登場人物が、等身大の高校生だと感じられるのではないかと思います。

  • 細かな部分の遊びが魅力

 たとえば、逆さ向きにつけられた「希望ヶ峰学園」の看板。希望をひっくり返して絶望、ということでしょうか。モノクマの趣味の悪さと、「オマエラの希望なんて手玉に取って遊んでやる」という気持ちが伝わってきます。

  • 推理が苦手でもいいし、アクションが苦手でもいい

 推理とアクションの両方で難易度が設定でき、しかもその幅がとても広いのです。
 デフォルトでは一番下の難易度「シンセツ」に設定されていますが、これだと登場人物がわりと親切に(かつ、都合よく)事件の手がかりを説明してくれたり、思い出してくれたりします。
 議論の流れ的に、筋が通ってないような気のする部分も一応あるのですが、ヒントが親切なので、あまり詰まることはないと思います。
 アクション部分も難易度をシンセツに設定すれば、プレイヤーを邪魔する要素がことごとく取り除かれており、すんなりクリアできることでしょう(かたや制作者は、せっかく考えたイジワルな仕組みが活用されないので、嘆いているかもしれません)。
 コンティニューも無限で、ゲームオーバーのペナルティも大したことはありません。
 ただコンティニューしてしまうと、オマケゲームに使えるメダルをもらえる数が減ってしまうので、このゲームを極めたい人は頑張ってノーコンティニューでのクリアを目指しましょう。ついでに言えば難易度を上げてクリアするともらえるメダルも増えるので、是非とも最高難易度設定でクリアしてみてください。
 ……というわけで、わりと誰にでもクリアできる難易度になってる上に、ヌルいゲームに満足できないプレイヤーも楽しめるという、わりと理想的なバランス調整がされていると思います。

  • 万人にはおすすめできない

 かといって、誰にでもお勧めできるわけではありません。
 まず、あまりに毒が強いこと。CERO Dらしいエログロの描写があること(逆にいえば、CERO Z扱いされるほどのものではありません)。
 推理ゲームと言われていますが、仕掛けや謎は、本格的な推理ファンからするとありえないレベルの稚拙なものです(ダイイング・メッセージなんて真相を隠すためのめくらましだと思いきや、本当に正解だったりする)。
 ですが、それらを補ってあまりある魅力があります。
 お話を考えるときに一番やっかいに感じるのは、魅力的なキャラクタを考えることだと言われていますが、このゲームはその魅力的なキャラクタにあふれています。
 徹底的に「ツマる要素」を排除し、誰にでも楽しめる難易度設定を心がけたことで、「ストーリーとキャラクタ」というダンガンロンパの最大の魅力をプレイヤーが最大限に楽しめるようチューニングされています。ストーリーとキャラクタに魅力を感じたならば、もはやプレイすることについて悩む必要はありません。
 ただ、人を選ぶゲームなのは確かなので、まずは体験版をプレイしてみることをオススメします。