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aruto's diary

Since 2003

堀井祐二、ドラクエIVを語る

昔からのドラクエ好きにとってはもはや伝説と化した感のある、JICC出版局(宝島社)発行のドラクエファンブック「ドラゴンクエストマスターズクラブ」が再入手できたので、その一部を紹介します。基本的にHIPPON SUPER!誌で掲載されたものの再編集ですが、いろいろ追加されています。ちなみに、オリジナルの誤字もできるだけ再現しています。

  • 早解きはもったいないね

……いよいよドラクエIVの発売ですね。
堀井 なんか今回は、ゲームができてから発売されるまでがとても長く感じられたので、とりあえずこれでひと安心できますよ。
……本来ならここで、発売に関する話を聞きたいところなんですけど、何しろまだ発売前ですからね。(このインタビューは1990年1月31日に行われた)ただ、早くも新聞には、ドラクエIVの名前が出てきましたね。
堀井 抱き合わせ販売の件ですよね。あれはホントに困った問題ですね。エニックスにしてもボクにしても、あんなことされても何のメリットもないし、ソフトを買う子供達にも迷惑ですよね。
……何か予防する手だてっていうのはないものなんでしょうかね。
堀井 エニックスとしては再三、問屋にそういうことはしないでくれっていう通達を、出しているらしいんですけどね。
……今後も、IIIのようにイロイロと問題が出て来るんでしょうか。
堀井 ただ、今回はIIIよりも多目に本数を用意してるはずなので、前回のように手に入らない状況はないと、今の時点では思っているんですけど。ただ、どうなるかは発売日になってみないと、何とも言えないんじゃないでしょうか。

  • 苦労したぶん理想に近いAIができた!

……今回イロイロと新しいことにチャレンジしてますけど、なかでもいちばん苦労したところはどこですか?
堀井 やっぱりAIでしょう。できあがるのに1年以上かかってますから。とにかくAIを使うっていうことは、最初からほとんど決まってたんですよね。それまでまず、'88年の2月頃から会議を初めて、延々と会議を繰り返したわけです。

……最初のうちは、ほとんどAIのことばかり話しあっていたんですね。
堀井 そうです。どんな方法があるかっていうのを何回も話し合って詰めていって、6月の段階で、これだというものがやっとできあがったんです。その後プログラムに移ったわけなんですけど、実際にプログラムをする山名くん*1がかなり苦労して、1年以上かかたっと思いますよ。
……苦労して作ったぶん、できあがりには満足してるんじゃないですか。
堀井 そうですね。山名くんがとても頑張ってくれたので、理想に近いAIになったと思います。
……ボクも実際にプレイしてみて、とても利口だと思ったし、よくできてるなぁと思いました。
堀井 ただ、あんまり利口すぎると逆につまらなくなっちゃう部分があるので、それに人間味をプラスしなくてはいけないんですよね。
……完ペキすぎないところなんか、とても人間的ですよね。
堀井 学習機能もある程度備えてるし、けっこうやってくれるでしょう。
……学習していく様子なんかは、見ていても気分イイですよね。
堀井 あとね、みんな誤解してるかもしれないんで、これだけは言っておきたいんです。たとえば8人いますよね。で、ブライばかり戦闘してて、マーニャは馬車の中にばかりいたと。だからマーニャは、このモンスターと戦うのは初めてだという場合でも、マーニャはいちおう馬車の中から今までの戦いを見ている、という設定のもとに学習しているんです。
 それはナゼかって言うと、1人ずつ出して学習させるのはダルいと思ったからなんです。だから、パーティとして覚えちゃう。1人の知識はみんなの知識というような、学習機能にしちゃったんですね。結果的にはこれでよかったと思いますよ。やっぱり、それぞれのキャラクターを外に出して、何回も同じモンスターと戦うのってダルいですから。
……逆に、中にいる人は学習できないとなると、必然的に外に出すキャラって固定されますよね。
堀井 そうなんですよね。役に立つキャラばかり使うことになるから、役に立たないキャラはいつまでたっても育たないし、役に立たないままになっちゃうでしょう。それじゃ困りますからね。馬車の中のキャラも経験値がもらえるっていうのも、そのせいなんです。
……とりあえず、今回初めてAIを使ったわけですけど、今後もAIを使ってみたいな、という気はありますか?
堀井 確かに今回初めてだったものですから、AI自体はよくできてたと思うんですけども、まだその機能を100%使いきってないような気もするんです。
……まだ可能性が残されていると。
堀井 というのは、AIは使ったけれども、モンスターデータは人間用に作っちゃったんで、AIの魅力を最大限に引き出せるようなモンスターデータがあんまりできなかったんですよ。
……そんな意味でも、今後AIの可能性というものをさらに展開させていきたいという感じですか?
堀井 そうですね。あとは、みんなが実際にプレイしてみて、どう思うかというところです。発売されてからどんな反響が返ってくるか、ということも考慮に入れたいと思います。
……やっぱり今回は、新しいことをたくさんやっているぶん、いつもよりよけいに反響が気になるんでしょうね。
堀井 気になりますね。AIについても賛否両論でるんじゃないかと思います。マニュアルで全部やりたかったという人もいるかもしれないし、操作が楽になってウレシイって人もいるかもしれないですから。そのへんの、みんなのイロんな意見を聞いたうえで、さらにもっといいカタチがないかを考えたいですね。だからAIの評判が悪くても、AIを捨てるのではなくてその悪い点をどうすればいいのか、というところからさらに始めたいと思うんですよね。 
……今後AIを使うときにですね。
堀井 AIか、さらにもっといい方法があるかもしれませんね。
……堀井さんて、今までも反響を生かしてゲームを作っていますよね。
堀井 反響の中でも特に、不満の部分を生かしますね。なんとかがめんどくさかったとか、それはある程度自分たちでも反省会を開いたりするんですけどね。るそういう意味では今回、コマンド体系をさらに使いやすくしたつもりです。カギを使うのがめんどくさいとか、そういった部分をすべて改善しましたから。

  • シナリオは3つの要素をうまくミックス

……もう1つ目立って新しい要素として、5章構成のストーリーっていうのがあるんですけど、そもそもどうしてシナリオを5つに分けたんですか?
堀井 これもイロんな要因があるんですよ。まず、メモリーが増えるぶん、IIIよりも長い話になりそうだと。そうすると、IIIよりも長い1本の話っていうのは、けっこうヘビーだと思ったわけです。長いぶん、終盤になってダレたりとかしちゃうんじゃないかとね。それだったら、スパンスパンと区切って、1本1本の話しとしてはそれほど長くないけど、全体のボリュームとしてはIIIよるもあるという方法をとろうと思ったんです。それで何章かに分けたいというのが出てきたんですね。
 また、それと平行してAIを使うということになったんですよね。AIで仲間が勝手に動くと。ただ、初めから勝手に動かれたんじゃ、あまり感情移入ができないんじゃないかと思ったんです。何か変なことをやっても、プレイヤーはろくに見ずにボタンを押していくだけじゃないかとね。やっぱりAIをおもしろいと感じるのは、そのAIのキャラに思い入れができないといけないわけですよね。それじゃあ、章に分けたのと合わせて、最初はAIじゃなくて、それぞれのキャラに対する思い入れをつくる部分にしようって、そう考えたわけです。コイツはこんなヤツだということがわかってこそ、5章になってからAIで動かれても、楽しめると思うんですよね。
……それぞれのキャラを各章の主人公にして感情移入しやすくしたんですね。
堀井 それプラスもう1つ、I、II、IIIとくるうちにシステムが進化しすぎて、初めての人があんまりついてこれないんじゃないかというのがあって。シナリオがせっかく5つもあるんだから、システム的にもI、II、IIIと進んでいくような感じにして、初めての人にもカンタンに遊びはじめてもらおうと……。最終的には、その3つの要素がうまく合わさったと思うんですけどね。
……確かに1章なんか、イロイロな面で入門用にもピッタリという感じはしますね。
堀井 ただ、あんまりドラクエIすぎてもちょっとつまらないので、ホイミンをつけてみたりとか。(笑)ちょっとだけNPC(ノンプレイヤーキャラ)の練習をさせたりもしてるんですよね。
……ホイミンはかわいいヤツですよね。やっぱり彼がいないと、クリアーするのはちょっとツライでしょうね。
堀井 はっきり言ってツライです。……これ以上言っちゃうとマズイとおもうので、ホイミンの話はこれぐらいにしときましょう。(笑)

  • ボリュームはあるけど、時間は変わらない

……ドラクエIVを解き終わるのにフツーの人でだいたいどれくらいの時間がかかりますか?
堀井 だいたいIIIと同じぐらいじゃないでしょうかね。というのは、今回はAIを使っているぶん、戦闘にかかる時間がみんなミョーに少ないんですよ。だから、感覚的には、レベルもけっこう早く上がって行くような感じがするんじゃないかと思うんですけど。戦闘中のコマンド入力に関しても、勇者を馬車の中に引っ込めちゃえば、ボタン一発ですんじゃいますからね。とにかく、1回の戦闘が早いですよね。
……あと、他の細かい部分でも、けっこう手間が省かれているっていうのも大きいですよね。
堀井 そういった意味で、ボリュームとしては、絶対IIIよりもはるかにあるんですけど、そういうムダな時間がとられないぶん、クリアーに要する時間はIIIとそんなには変わらないんじゃないかという気がしますよ。
……IIIでは、だいたい何時間ぐらいが目安だったわけですか?
堀井 早い人で40時間ぐらいかな。遅い人だと100時間とかかかっちゃう人もいたみたいですけど。
 ただ、あんまり早く解いちゃうのも、なんかもったいない気がしますけどね。

  • 多くのイベントにはさまざまな苦労が

……今のところ2章までやらせてもらったんですけど、今回は結構イベントが多そうですよね。2章なんていきなりイベントがあったりして…。
堀井 そうですね。2章はバランスどりもけっこう苦労しました。というのは、町の数が多いものですから、隣の町までの距離もあまりなくて、ヘタすると1回もエンカウントせずに行けてしまう可能性があったんですよ。

……それで最初の町に、注意のメッセージがあったりするわけなんですね。
堀井 あのサランの町の武器屋にはアリーナが装備できる”いばらのムチ”を売るようにしたり……。地形をモンスターに会いやすいように山を多くしたりと、いろんなことをやりました。で”いばらのムチ”を買うために戦っていると、ちょうど次の村にいっても大丈夫なレベルになっていると……。
……町や城の人々のセリフも、かなりの量になったんじゃありませんか。
堀井 そうです。やっぱり、イベントの前と後ではセリフを変える必要があるし、かといって全部を変更してたらとてもメモリが足りないし…で、結局イベントの前後どちらでも通用しうるセリフに工夫したものもあるんですよ。

  • 勝つ勝率を計算してオッズが作られている

……あと、カジノもやらせてもらったんですけど、あれはオトナがハマるんじゃないかと思います。
堀井 けっこう凝ってるでしょ。
……あれは絶対ハマりますよ。
堀井いゃあ、ボクはあそこまでチュンソフトが凝ってくれるとは思わなかったですよ。
……特に格闘場が、前よりオモシロイんじゃないかなって感じがするんですが…。
堀井 前はランダムで対戦カードを作ってたんですけど、今回は前もってある程度のカードを用意してあるんです。で、オッズ(倍率)もちゃんと設定してあるし。
……オッズを調べるのが、かなり大変だったという話を聞いてますけど。
堀井 チュンソフトの浅井くんっていう人がいるんですけど、彼が、こっちのスタッフが作ったカードを何度もためして、確率を計算して、オッズを作ってくれたんですよ。
……ということは逆に言えば、それだけ確かめてあるから、いくら倍率が高いとはいっても、決して勝てないというわけではないんですよね。
堀井 そうです。勝つこともあります。勝つ確率が0っていうカードはないです。

  • Iの思想が今まで引き継がれている

……ちょっと話がむずかしくなるかなって気がするんですけど、ゲーム内における死の概念に関してお聞きします。ドラクエの場合、死というものが軽じられていると、『友の会』でよく言われているんですけど、あの方法にしたに何か理由はあるんでしょうか。
堀井 まあ、最初にドラクエの企画ができた時点では、その件に関しては違う方法だったんですよ。王様に復活の呪文を聞いたところまで戻すか、イロイロなシステムがあったんですけど、RPGの入門用としては、それだとあまりにもツライんじゃないかということになったんです。たとえば、フラフラ出ていって死んじゃったら、王様のところまでもどっちゃいますよね。ということは、お金もその前まで戻るし、レベルも前に戻るし、そうするとちっとも先に進まないわけですよ。で、わかんないままちっとも進まないっていう状況だけは、避けたいと思いました。とにかくRPGのことをみんなにわかってもらおうっていうんで、大幅に変更してしまったわけです。お金が半分になっても、経験値やアイテムさえ残っていれば、何とかなりますからね。で、その思想が、今まで引き継がれているんです。
……Iで、RPGをひろげるためにということで作ったものを、今も引き継いでいるわけですね。
堀井 今さらシメることもないだろうと思うんですよね。
……それがやっぱりドラクエらしさだと…。
堀井 そうですよね。で、ホント言うと、ナゾとかもイロイロと思いつくんですけど、ドラクエって万人向けに作っているんで、難しすぎるナゾは全部ボツにしてるんですよね。
……ドラクエでそういうことをやってはいけない、と。
堀井 そうそう。だから、ひんしゅくものじゃなくて、考えれば絶対わかるようなナゾでも、これはちょっと難しすぎるなって言うんで、やめちゃってるナゾもけっこうあるんです。ホント時間さえ許せば、そういうのばかり集めてね、死んだ時には死の恐怖を与えるようにして、ちゃんとやらないといけないようなハイレベルバージョンのドラクエを、作ってみたいって気もするんですよね。

  • ボスの名前はどうして出てこない?

……今までは、いつも必ずボスの名前がわかっていたと思うんですけど、今回に関しては名前が出てきませんよね。
堀井 あっ、そうでしたっけ?
……ええ、今までは『竜王』とか『ハーゴン』とか、出てましたよね。で、今回は名前が出てこないわけですけど、それには何か理由があるんですか?
堀井 別に意味はないですね。はっきり言って。深く考えすぎじゃないですか。で、今までは最初の方で『バラモスの野望が…』とか『ハーゴンの軍団が…』とか言ってますよね。で、今回に関しては、シナリオでそういう名前が出てくるのが、後だったからなのかもしれません。
……今までって最初から目的がひとつだったから、いきなり名前が出てきたわけですね。
堀井 そうなんですよ。今回は5章に分けたもので、それぞれみんな目的が違って出発するから、最終的な目的は5章にならないとわからないわけです。で、結局、5章のことは後だから、出てくるのが遅いんでしょうね。

  • セーブするのは今回も王様の役目だった

……『おいのりをする』が、今回ようやく採用されたわけですが、あれはやっぱり最初っからセーブだったわけですか?
堀井 最初は違ってたんですけどね。で、なんで今回そうにしたかと言うと、王様のところまで遠いという意見が多くてね。
……当初は王様の役目であったと。
堀井 そうです。それにボクの方もシナリオを書く時に、王様のやることが多すぎて、本来なら王様が言うべきセリフを、なかなか言いにくかったっていうのがあるんですよね。性格づけが、この国の王様はこんな王様だとか言う前に、とにかく王様はセーブをしなきゃなんないし、次のレベルまでを教えなきゃならない。それに死んだらそのフォローもしなくてはいけない、と、やることが山ほどあったんです。だから、王様本来の、人間としてのセリフがあんまり書けなかったんですよ。
……それで今回は、ちゃんと王様でいさせてあげようってことなんですね。
堀井 そう。それに教会なんかは町の入口に近いでしょ。
……今までだと、王様は城の奥にいましたからね。
堀井 だからレベルアップを聞きにいくにしたって、セーブするにしたって、けつこうしんどかったですよね。そういうことがあったので、結局こうなったんです。
……『おいのりをする』って昔は何だったんですか?
堀井 今まで何度もボツになってるんだけど、その都度内容が違うからね。よく覚えてないんですよ。最初の『おいのりをする』なんか、たいした意味がなくて、アーメンアーメンと言って、ちょっと得なことがあるぐらいだったんです。

  • みんなの意見が次のゲームをつくるのだ

……それでは最後に、実際にゲームをプレイしている最中の人たちに対して、何かありますか?
堀井 じゃあ、ぜひ、ゲームをやっていろんな意見があったら、エニックスのボク宛にお手紙ください。
……今後の参考にしたいと。
堀井 そうそう、今後の参考にさせてもらいます。
……みんなの意見が、次の堀井さんのゲームを作るという感じになるんでしょうか。
堀井 そうですね。自分でもイロイロと気を遣っているつもりなんだけれども、やっぱり見落としちゃってる部分があるかもしれないですからね。
……やっぱりそういうのは、こどもとおとなではけっこう見方が違ったりしますしね。
堀井 プレイしていた気が付いたことがあったら、ゼヒとも教えて欲しいですね。

ファミコンで出すかスーパーファミコンで出すか、けっこう悩みましたね。でも、ファミコンで出すと値段が高くなっちゃうんですよ。8メガにして、RAMを何個かつむと、14000円ぐらいになのかな、ゲーム1本が。そうなるとゲームの値段じゃないですよね。それに、この先スーパーファミコンがどんどん普及していくなら、いつかは乗りかえるしかないですからね。子どもたちにしても、スーパーファミコンを買いたいって子がけっこう多かったんで、まぁいいかなと。
昨年の10月頃から制作にとりかかり、今のところは順調に進んでますよ。まぁ、始めの頃は打ち合わせばかりだったんですけどね。とにかく、ハードが変わっちゃったので、今まで以上に苦労することが多いんですよ。それだけに、未知の可能性を感じますね。
今はまだ詳しいことは言えないんですけど、システムにしてもシナリオにしても、いろいろと考えてますよ。期待しててください。
[ ※ファミコン必勝本 '90年 Vol.5、6 に掲載したインタビューを再構成したものです。 ]