aruto's diary

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Phenom IIは、64bit OSで覚醒する

「Core 2が出る前のAMDは調子良かったのに、最近のAMDは全然だめ」という話をよく聞きます。理由を聞くと、みな口をそろえて「Phenomが遅いから」と言います。
さて本当にPhenomは遅いのでしょうか?現在はすでにPhenomからPhehom IIへ切り替わっていますので、Phenom IIがどのくらい速いのか、比べてみましょう。
処理速度を測定するために、Cinebench R10を使用しました。これは"Cinema 4D"という3DCGソフトウェアのレンダリングエンジンをそのまま使用した、本格的なベンチマークソフトウェアです。ちなみにMac OS版もリリースされているので、WindowsMac間での比較もできます。
では結果を見てみましょう。Windows XP 32bitで測定しました。

CPU ベンチマーク 価格 スコア÷価格
Phenom II X4 / 945 9,811 ¥14,474 0.677
Core 2 Quad Q9550 10,930 ¥26,224 0.416
Core 2 Duo E8600 7,046 ¥26,558 0.265
Core i7 920 13,624 ¥27,000くらい 0.504

……ううむ。デュアルコアよりは速いですが、あまりパッとしません。
では、WIndows7 64bitで測定した結果を見てみましょう。

CPU ベンチマーク 価格 スコア÷価格
Phenom II X4 / 945 12,533 ¥14,474 0.865
Core 2 Quad Q9550 12,529 ¥26,224 0.477

なんと!わずかですが、逆転してしまいました。Phenom IIが勝利してると言いたいところですが、僅差ですので、「結果は誤差程度の違いで、実質同じ」といったところでしょうか。
価格が倍近いCPUとほぼ同じレベルになってしまいました。
注目すべきはPhenom IIの32bit→64bitでの性能の伸びです。なんと1.27倍。Phenom IIを使っている方には、ぜひとも64bit OSをお勧めしたくなりますね。Core 2 Quadも伸びているのですが、こちらは1.14倍にすぎません。
さらに注目すべきは、そのコストパフォーマンス。この表では”スコア÷価格”でコストパフォーマンスを割り出しているのですが、0.865とダントツです。Core 2 Duoにいたっては(64bit環境のデータがないので32bitですが)0.265。速さで評判のCore i7/920でも0.504(32bit)です。やはりIntelは「速さを求めると、高くつく」のでしょうか。i7はハイエンドなので仕方ないかもしれません(Core i5は安いがパフォーマンスも落ちる)。
ほかにもPhenom IIは「Socket AM3自体の寿命が長い」のが特徴です。Intelで現在Core i5/i7で使われているLGA1156、LGA1366は、まもなくリプレースされる予定で、今後はLGA1155等が使用されることになっています。それに対し、AMD6コア「Phenom II X6」対応のAM3マザーボードがすでに発売されています。
ただAMD CPUは絶対性能が低いのが欠点かもしれません。現在発売されているAMD デスクトップPC向けCPUの最高性能品がPhenom II X4/965(¥17,329、3.4GHz、4コア)ですが、それに対しIntelの最高性能品はCore i7-980X EE(¥108,800、3.33GHz、6コア)です。Intelは「高いお金を出せば、高い性能が得られる」のですが、AMDはまだX4/965を上回る性能は(デスクトップPC向けでは)得られません。
とりあえずPhenom II X6がもうすぐ出るようなので、それに期待でしょうか。最高性能品はX6/1090T($319、3.2GHz、6コア)となるようです。6コアですが、価格もそれほど高くはならなさそうですね。

  • おまけ

初代Phenomとも比較してみましょう。XP/32bitでのベンチマーク結果です。

CPU ベンチマーク 熱設計消費電力
Phenom II X4 / 945 9,811 95W
Phenom X4 9950 8,385 140W / 125W
Phenom 9550 7,101 95W
Core 2 Duo E8600 7,046 65W

……うーん。消費電力が1.4倍程度あるのに、性能は2割減となってしまいました。
一番最初に発売されたPhenomは 9500。エラッタ(CPUのバグ)があったため修正版が発売され、それが9550となりました。
そのPhenom 9550のスコアですが……なんとデュアルコアのE8600と変わりません。つまり、1コアあたりの性能はおおよそCore 2 Duoの半分となります。
レンダリングでは4コア全て使いますが、それ以外(ゲームなど)では1コアしか使われない場合もあるため、ゲーム等では1コアあたりの性能が重要です。Phenomは1コアあたりの性能がCore 2 Duoの半分程度しかないため、ここで「遅い」「いまいち」の烙印を押されてしまいました。9950では性能も上がっているのですが、そのぶん消費電力も高く、扱いづらい印象を与えています。
これが「Phenom = いまいち」という評判を作ってしまったのです。ですがベンチマークを見てもらえばわかる通り、Phenom IIになってそれは大幅に改善されています。
いまだに「Phenom = いまいち」と思っている人には、ぜひとも大きく改善されたPhenom IIの性能を見てもらいましょう。